編集手帳 8．27

本日の読売一面より、本当に頷ける

ドイツの思想家、ゲオルク･リヒテンベルクは著書『雑記帳』に書いている

＜蠅は叩かれたくなければ蠅叩きの上にとまるのが安全である＞と

日本でも知恵のまわる蚊は能楽師の鼓を持つ手ではなく、打つほうの手にとまるとか

蠅や蚊を例に引くのが礼を失しているならば、黄金虫でもいい

小沢一郎氏からは「下種の勘ぐり」とお叱りを受けるのは覚悟の上で、

民主党代表選に出馬する意思を固めたほんとうの心を尋ねてみたいところである

政治資金事件で検察審査会が今秋にも下す決議次第で、小沢氏は強制起訴となる可能性がある

その時に(小沢)氏が首相の座にあれば、憲法の規定により起訴を免れる

しかし政治の信頼は地に落ちるだろう、国政を混迷に導く議決をしてよいものかどうか

検察審査会のメンバーはおそらく悩むに違いない

小沢氏が議決に一切介入しなくても、"小沢首相"の存在自体が圧力になる

わが身を叩くかもしれない司法の手の上に、政治家はとまってはいけない

同じ虫ならば、円高･株安の闇に明かりをともす蛍となって時節を待つ道もあったはずである

編集手帳　8月26

漢語の「着想」には、中々の貫禄がある　和語の「思いつき」はつまらないことを軽薄に思ったようにしか聞こえない

とは国語学者、大野晋さんの指摘である

丸谷才一さんは『字音語考』と題する随筆の中で大野党に共鳴し、戦時中の「焼土決戦」や「一億一心」などを例に挙げていう

漢語は威勢がよくて当たりがきつい。意味がもうろうとしているため、音の響きがいっそう刺激的になると

民主党代表選挙でキーワードのように語られる「挙党一致」にも、

意味もうろうとして何ともなくもっともらしい漢語の特徴が表れている

そもそも民主党が先の選挙で大敗を喫した主因の１つは「政治と金」である

本来ならば閉門蟄居してしかるべき小沢一郎･前幹事長の出馬が取りざたされ

同じく謹慎組みにいるはずの鳩山由紀夫･前首相が党内各グループ間の調停者然としてテレビカメラの照明を浴びる

天下の奇観というほかはない　挙党一致などと漢語を用いず意味のわかりやすい和語で言うのがいいだろう、ごちゃまぜと